Alibaba Cloudによる日本リージョンからの閉域網接続パターンを解説します。

作成日:2021/06/13この記事は最終更新日から1年以上が経過しています。

日本と中国のプライベートネットワーク接続(以下、日中接続)の解説の流れとなります。

  1. 本記事の狙い
  2. 日中接続パターン
  3. Alibaba Cloudであるメリット
  4. 日中接続の注意点
  5. 日中接続の構築例

1. 本記事の狙い

パブリッククラウドにおけるAlibaba Cloudの代表的な強みとして、中国との安定したネットワーク接続が挙げられます。ではAlibaba Cloudで具体的にどのようなサービスを用いれば日中接続を実現できるかを、既存の資料を交えて紹介いたします。

本記事を理解する前提として、Alibaba CloudのVPCとリージョンの知識が必要となるので、初見の方は以下のURLも併せてご確認ください。

VPCとは: https://www.alibabacloud.com/cloud-tech/doc-detail/34217.htm

リージョンとゾーン: https://www.alibabacloud.com/cloud-tech/doc-detail/40654.htm


2. 日中接続パターン

Alibaba Cloud同士の接続

日中のシステムが共にAlibaba Cloud上で構築されている場合には、CEN (Cloud Enterprise Network) というサービスを用いるのが一般的です。
CENは、VPC(仮想ネットワークセグメント)に対して包括的なルーティング機能を提供します。その為「CENインスタンスの作成」と「CENインスタンスに対してVPCを紐付ける」の2ステップによって、日中VPC間でのプライベートIPアドレスによる通信が可能となります。ダイナミックルーティング等の複雑な設定は一切不要です。

ステップバイステップ手順

SBCloudドキュメント: CEN利用手順書

https://www.sbcloud.co.jp/entry/2018/08/01/cen-introduction/

Alibaba Cloudドキュメント: CEN利用手順書

https://www.alibabacloud.com/cloud-tech/doc-detail/59870.htm

本構成が当てはまるシステムの要件

  • データロスが許されないデータ通信
  • リアルタイム性が重要となるデータ通信
  • 新規ビジネス展開に伴う新規システムの構築
  • 既存のAlibaba Cloudリソースの利用
  • シンプルなインフラコードを実現したい

構成イメージ

CEN構成例

Alibaba Cloud以外のパブリッククラウドとの接続

日中のシステムにおいて、他方がAlibaba Cloud以外のパブリッククラウド(AWSやAzure)上で構成されている場合、日中接続する為にIPSecを用いたVPNトンネルを構築するのが一般的です。

VPNトンネルの構築は以下の2ステップで実現出来ます。

  1. Alibaba CloudおよびAlibaba Cloud以外のアカウント、 この両方でVPNゲートウェイを作成する
  2. それぞれのVPNゲートウェイに、IPSec設定情報と対抗のゲートウェイ情報を入力する

VPNトンネルの構築後に、VPNトンネルを介した疎通を可能にする為、以下を実施します。

  1. VPCのルートテーブルの宛先に、相手先のネットワークセグメントを入力して、静的ルーティング情報を変更する

Alibaba Cloud同士での接続と同様、ダイナミックルーティングのような複雑な設定は不要で、上記3ステップで全てが完了します。

ステップバイステップの手順

SBCloudドキュメント:Alibaba Cloud - AWS

https://www.sbcloud.co.jp/entry/2018/07/03/alibaba-aws_vpn/

SBCloudドキュメント:Alibaba Cloud - Azure

https://www.sbcloud.co.jp/entry/2018/07/04/alibaba-azure_vpn/

Alibaba Cloudドキュメント:Alibaba Cloud - 汎用

https://www.alibabacloud.com/cloud-tech/doc-detail/65072.htm

本構成が当てはまるシステムの要件

  • 日中の通信で、秒単位での遅延や通信断が発生しても問題ない
  • 開発環境のデータを用いて、Alibaba Cloudを試用したい
  • 他社パブリッククラウド上のシステムを流用したい
    e.g. 日本リージョンのAWSからコンテンツ配信して、中国リージョンのAlibaba CloudのCDNを利用して低遅延配信する

構成イメージ

構成イメージ

オンプレミスとの接続

日中のシステムにおいて、他方がオンプレミス(=データセンタ)に存在している場合、日中接続する為の手段は2つあります。

一つは、他社パブリッククラウド接続と同様に、VPNトンネルを経由した接続です。
もう一つは、ダイレクトアクセスという回線サービスを用いて、オンプレミスとAlibaba Cloudを直接接続する手法で、こちらを推奨しております。

ダイレクトアクセスは、ソフトバンク株式会社が持つネットワーク資産とノウハウを利用して、Alibaba CloudのVPCとオンプレミスのシステムを閉域接続します。これによりVPNトンネル接続では実現できない、高品質なネットワーク接続を実現出来ます。
また、VPNトンネルの構成でも、ダイレクトアクセスの構成でも、CENを併用する事で複数のVPCとオンプレミスとを一括で接続する事が可能です。

ステップバイステップ手順書

SBCloudドキュメント:ダイレクトアクセス

https://raw.githubusercontent.com/sbopsv/cloud-tech/master/content/network-connect-case/DirectAccessOpeningGuide_ver1.3_20220602.pdf

ソフトバンクドキュメント:サービス紹介書

https://www.softbank.jp/biz/nw/nwp/cloud_access/direct_access_for_alibaba/

Alibaba Cloudドキュメント:VPN ゲートウェイを経由したローカルデータセンターから Alibaba Cloudへの接続

https://www.alibabacloud.com/cloud-tech/doc-detail/87042.htm

Yamahaルータを用いたVPNトンネルによる接続

https://network.yamaha.com/setting/router_firewall/cloud/alibaba_cloud

本構成が当てはまるシステムの要件

ダイレクトアクセスによる日中接続を前提として、以下の要件に最適と言えます。

  • オンプレミスの基幹システムと連動したAlibaba Cloudの利用
  • オンプレミスとAlibaba Cloudでのシームレスなデータ連携
  • オンプレミスからAlibaba Cloudへのシステム移行

構成イメージ

ダイレクトアクセス 構成イメージ


3. Alibaba Cloudであるメリット

Alibaba Cloud以外のパブリッククラウドと比較して、何がメリットになるのかを記載します。

  • ネットワーク品質が保証されている
    →帯域幅を購入する事でSLAに沿った品質が担保される
  • 日中アカウントを単一のコンソールで管理できる
    →ユーザ管理も含めて一括管理可能
  • ネットワークセキュリティの実績が豊富
    →中国国内の数多く攻撃から防御した実績のあるプロダクト・構成を利用できる
  • 中国国内で利用可能なプロダクトおよびリージョン数が多い
    →日本リージョンと同じプロダクトを中国リージョンでも利用できる為、システム構成に差異が生まれない

4. 日中ネットワークの注意点

  • CENのネットワークの帯域幅は1Kbpsです。したがってpingでの通信は可能ですが、httpの通信はデフォルトではほぼ疎通しません。VPC間で利用する帯域幅の上限を選択する形で実現できます

  • VPC間での帯域幅については、上限値をパッケージとして購入する事で、購入した分の帯域幅を確実に利用する事が出来ます

  • デフォルトだとIPSec IKEv1なので、IKEv2は設定変更を加えてください

  • IPSecが繋がらない場合には以下の項目をチェックします
    https://www.alibabacloud.com/cloud-tech/doc-detail/65802.htm

  • Alibaba Cloud同士の日中接続はExpressConnectでも実現できるが、同要件については現在CENの利用を推奨しています

  • Smart Access Gatewayは中国リージョンでの利用可能で、2019年9月末時点で日本リージョンでは利用不可です


参照URL

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